2月11日
1785年2月11日、モーツアルトはウィーン市立集会場〈ツア・メールグルーベ〉において開かれた予約演奏会で、現在でも人気を誇るピアノ協奏曲ニ短調K.466を初演します。会場には父レオポルトの姿もありました。大司教コロレド伯と決裂し、父の意に背いてウィーンへと居を構えて4年。父とは久しぶりの再会でした。父にはやっとの事で新妻コンスタンツェを紹介できました。残念ながら2年前には長男を生後2ヶ月亡くしてしまいましたが、前年の1784年には次男が誕生しています。ウィーンでの華やかな日々、まだ夢溢れた、言わば最も幸せな時期と言えますね。
この演奏会にはかのヨーゼフ・ハイドンも招かれていました。翌日にはヴォルフガングは自宅に再びハイドンを招き、ハイドン・セットと呼ばれる3曲の弦楽四重奏曲を披露。その席でハイドンはレオポルトに対しこう述べています。
「私は誠実な人間として神にかけて申し上げますが、あなたの御子息は私が個人的に知っている、あるいは名前だけ知っている全ての作曲家のうちで最大の人物です。」(2月16日のナンネルへの手紙)
私はかつてこの協奏曲を、かのジャズピアニスト、チック・コリア氏と共演しました。コリアは演奏の冒頭に大変自由な即興ソロを加え、その音楽が自然と冒頭のシンコペーションへと繋がって行きました。モーツアルトも即興の大家でしたから、もしかしたらこんな風に自由なソロを加えていたかもしれないなあ、と感慨深く聴き入ったものでした。しかしジャズではあれ程自由奔放なコリアが、楽譜に縛られがんじがらめのような印象を受けたのは意外でした。
この協奏曲はベートーヴェンもお気に入りで、ベートーヴェン作の有名なカデンツァまであります。憂鬱で落ち着いたその音楽は、一度耳にしたら忘れられませんね。この音楽は詩のようです。秋の風景を目にして、心静かに風を受け止めているかのような・・・。う〜ん、私にピッタリだなあ・・・。
これ、笑わないの。
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