Morzart Symphony Orchestra
モーツァルト・シンフォニー・オーケストラ

マエストロ・ペンの  
   ある日のモーツァルト (1)

            11月16日

 1789年11月16日、第5子アンナ・マリアが誕生するものの、僅か1時間後には引きつけを起こし亡くなってしまいます。彼の生涯最後の子供でした。

 時は死の2年前、経済状態は悪化の一途をたどり、借金申し込みの手紙が続きます。この年の7月にはコンスタンツェが病に倒れていますから、母体の健康状態も最悪だったのでしょう。現在から見れば民間療法に毛が生えた程度の医療レベルですからね。実は前年にも長女を亡くしています。まるで神様は、モーツアルトの遺伝子をこの世から根こそぎ取り去ってしまおうとしているかのようです。


 1783年に長男を生んでから、この夫婦はほとんど毎年のように子を生しています。コンスタンツェも大変だったでろうなあ。ちなみに四男の名前フランツ・クサーヴァーは、彼の弟子として名を残すジュスマイヤーと同名です。病気がちだった妻は療養で幾たびもバーデンに滞在し、忙しかった夫の代わりに弟子が妻の世話をしていますから、この四男の父親は?とよく勘ぐられてきました。ホントかよ、やばいなあ。なんか生臭い匂いがするなあ。


 もっともこうした三面記事的なゴシップはモーツアルトには似合いませんね。相次ぐ娘の死を目にして彼の何を思ったろうか。この頃からモーツアルトの音楽は、晩年特有の、えも言われぬ美しさと寂しさを持ちますが、待てよ。娘の死の傍らで書いていたのは「コジ・ファン・トゥッテ」だったぞ。天才とはかくも不可解なものです。悲しみながら笑えるんですよ。


 それにしても遺伝子というのは不思議だなあ。たった数週類の塩基の組み合わせでこの世の全てができているなんて、私の音符頭にはてんで理解不能です。もしもモーツアルトの遺伝子を少しだけ貰えたら、あなた何します?ピアノを目隠しで弾き、ヴァイオリンを何気なく奏で、目をつぶって作曲します?私ならスカトロジーにはまるかなあ。何せほら、私上品だから。へへへ。


モーツァルト・シンフォニー・オーケストラ 2003年創立     ホームページ 2008年開設     無断転載禁止